グローバル機械工学人材交流プログラム

留学生の1日

機械工学専攻
高木・杵淵研究室修士2年
中西 紘章

機械工学専攻 高木・杵淵研究室修士2年 中西 紘章
留学先:スウェーデン王立工科大学(KTH)

1日の過ごし方
8時:起床

ご想像の通り冬のストックホルムの朝は寒いです。ただ、私が住んでいたBjörksätraという寮はしっかりとした防寒仕様になっていて、真冬でも薄着で困らない室内環境でした。目覚ましのためのシャワーを浴びた後、CNN10という10分間の英語のニュースを聞きながらシリアルとヨーグルトを摂って朝食とします。身支度を終えると防寒具をしっかり身に纏い、今日はどんな天気だろう、とそっと玄関のドアを開け、雪風に目を細めたり久々の晴天に目を見開いたりしながら最寄り駅に向かいます。

10時:研究室到着
登校にはSLという地下鉄を使って、片道凡そ1時間かかっていました。木村君などとは違い、寮としてはなかなか遠目のところを割り当てられたようです。研究室に着くとメンバーに挨拶をし、研究室前の無料コーヒーサーバーで朝の一杯を淹れ、飲み干します。すぐにデスクに戻ると、まずは東大の研究室関連のメールを処理し、それを終えるとKTHでの研究が始まります。これまで実験屋だった私がKTHでは修論テーマに関連したシミュレーションをやることになり、正直分からないことだらけだったので、頻繁に自分のデスクと指導員の間を往復しながら少しずつ理解を深めていきました。

12時:ランチ
KTH構内には昼食を摂れるカフェテリアが数カ所ある他、図書館内でサンドウィッチやランチボックスを購入してテイクアウトすることもできます。KTH構外にも様々な国のレストランが立ち並んでいます。私がいた研究室では、特に月曜日から木曜日は昼食をテイクアウトで購入し、皆で研究室前の広めのテーブルを囲んでいました。金曜日は皆で構外のレストランでランチをする習慣があり、普段交流できていない学生とも交流できる貴重な時間になっていました。なお、図書館では毎日Language Caféというものが開かれていて、私は毎週月曜日開催の日本語のLanguage Caféに参加し、日本語を学ぶ現地学生と交流を図っていました。

13時30分:研究再開
ランチを終えて研究再開です。お昼の間に回しておいたシミュレーション結果を眺めながら妥当性があるかを確認したり、手を動かして数式をごりごり計算したりしていました。ある程度軌道に乗ったらシミュレーションを他の条件で回し、結果が出揃うまで論文を読む、といった作業ができれば理想的。大抵はおかしな結果が現れて、その原因究明に時間を費やすことが多かったです。
また、週末になると指導員と一緒に翌週何をやるか考え、初めに立てた計画から遅れていないかなどを細かに話し合いました。特に月末になると進捗をPower Pointのスライドにまとめて教授に報告していました。

15時:Fika
週に2回、Fikaという「おやつの時間」がありました。Fika自体はスウェーデンの代表的な文化の一つで、甘いものをつまみながらコーヒーを飲むことを指します。私がいた研究室では持ち回り制でメンバーがパウンドケーキなどを用意し、それを皆で分け合って食べるということをしていました。コーヒー片手に甘いものをつまむと自然と和やかな雰囲気になり、ランチの時とはまた違った交流ができました。

17時:Innebandy
毎週水曜日の夕方からKTH内のジムで研究室のメンバーとInnebandyと呼ばれる室内ホッケーをしていました。Innebandyはスウェーデンではメジャーな競技らしく、競技のイメージとしては非常に小さなゴールを目指して非常に軽いボールを打ち込むホッケーといったところです。研究室にこもりっきりだと運動不足になってしまうので定期的に運動できたのは非常に良かったです。また、留学開始当初、まわりとの打ち解け方に困っていた私も、スポーツを通して研究室のメンバーと打ち解けることができました。

20時:帰宅・夕飯
冬のストックホルムは日が沈むのが早すぎて一体何時なのか分からなくなりがちですが、あまり遅くなりすぎないうちに帰宅します。夕飯はパスタが簡単ですが、そればかりでは飽きるので、特に留学の後半は日本から持参した鍋キューブを使って一人用の鍋を作ることが多かったです。食後はネットで日本のバラエティ番組を見たりしながら時間を過ごしていました。

24時:就寝

休日の過ごし方
休日は生活雑貨を近くのIKEAまで買いに行ったり、ストックホルム観光したり、留学生でパーティしたり、友人とバーで飲んだり、とのんびり楽しく過ごしていました。時には少しだけ長めにお休みを頂いて、スウェーデンの中でも北方に位置するキールナという街にオーロラを見に行ったりもしました。ただ、折角の北欧留学の機会だったので、もう少しヨーロッパ観光もできていれば良かったかなと反省しています。




参加理由
私が今回GMEプログラムに参加したのには2点理由があります。まず1点目の理由としては、留学から逃げ続けてきた自分と決別したかったためです。元々学生の留学に対して批判的な立場だった私は、留学など全く考えずに学生生活を送ってきました。一方で、私と似た考えを持った学科の同期が、実際に海を渡り、自分の目で見て、自分の心で感じ、自分の頭で考えて帰国してきたのを見て私は自分を非常に恥じました。彼から遅れること2年、目を背け続けてきた留学というものと向き合い、自分自身が経験した上で留学の良し悪しを少しでも語れるようになりたいと思いました。
2点目の理由としては、生活環境を大きく変え、日本と自分をもう一度見つめ直してみたかったためです。グローバル化が叫ばれる昨今にあって、私は自分が、日本とはどういう国なのか、そこに住む自分はどんな人間なのか、を世界の中で相対化して語ることができないことに気づきました。価値観や文化的・宗教的背景の異なる人々と交流し、自分、ひいては日本という国の輪郭を明瞭にすることでこそ、これからのグローバル化社会において「日本人」として振る舞えるのではないかと考えました。根底に同じ価値観を共有している日本人のコミュニティの中で生活していくのは快適です。しかしその閉じられた世界に居続けていいのだろうか、ますますグローバル化する世界に自分は取り残されてしまわないだろうか、といった焦りや不安が私の中にはあったように思います。
以上2点、大層なことを述べましたが、平たく言えば「甘ちゃんな自分を変えたかった」ということに尽きると思います。そんな中で研究は留学の大きな目的であり、かつ手段でした。研究を通して自分に不足している能力を嫌というほど痛感させられ、悔しい思いも数多くしてきました。それでも研究を続けられ、曲がりなりにも結果を残せたのは周囲の方々のご協力あってのことでした。特にGMEコーディネータの方々と私の指導教員である高木周教授には日本から何度も助けて頂きました。この場をお借りしてお礼を申し上げます。ありがとうございました。

最後に
最後に、私が留学を決意する決め手となった、私の敬愛する先輩のお言葉をご紹介したいと思います。
「いいかよく聞け。お前は行っても行かなくても絶対後悔する。」
文末には反語表現的に「ならばどうして行かないことがあろうか」と付け足して頂ければと思います。かと言って単なる留学では後悔の方が大きくなるので、強い目的意識を持って挑戦して頂ければ、きっと実りある研究留学になると思います。長文になってしまいましたが、ここまで読んで下さってありがとうございます。読んで下さった方が少しでもGMEに興味を持ち、志を持って下されば幸いです。

機械工学専攻 高木・杵淵研究室修士2年 中西 紘章

留学生の1日
2022年度
-> 精密工学専攻 伊藤高松研究室修士2年 水谷 あやな
-> 機械工学専攻 ムテルドゥ研究室修士1年 谷内田 大貴
-> システム創成学専攻 川畑研究室修士1年 諸星 璃月

2021年度
-> システム創成学専攻 髙橋研究室修⼠課程1年 森島 拓⽣

2018年度
-> システム創成学専攻 鳥海研究室修士1年 菊田 俊平
-> 機械工学専攻 高木・杵淵研究室修士2年 堀 直樹
-> 精密工学専攻 梅田研究室修士2年 岡田 有希
-> 機械工学専攻 山中研究室修士1年 樗木 浩平

2017年度
-> システム創成学専攻 村山研究室修士1年 木村 圭佑
-> 精密機械工学専攻 金研究室修士1年 森下 靖久
-> 機械工学専攻 高木・杵淵研究室修士2年 中西 紘章

2016年度
-> 精密工学専攻 梶原研究室修士1年 菊池 章
-> システム創成学専攻 福井研究室修士1年 四方 裕

2015年度
-> 精密工学専攻 小谷研究室修士1年 加藤 直之
-> 機械工学専攻 塩見研究室修士1年 桐谷 絵美

2014年度
-> 機械工学専攻 塩見研究室修士2年 二田 智史
-> 精密工学専攻 藤井研究室修士2年 松本 倫実

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